コラム

研修効果測定の前に考えておくこととは – Vol.1

研修効果測定は、自社の全ての研修で行うことはほぼ不可能思われます。となると、その中で「効果を測りたい(測らなくてはならない)研修は何か」を検討しなければなりません。また、「何をもって『効果』とするか」を予め決めておくことが重要です。

ただ、それらの答えを探す前に、そもそも「研修」自体がどのような特性を持っているかを再考することが必要です。
本コラムVol.1では、企業等で行われている研修の現状と課題から、「研修」に存在する根本的な課題を捉えていきたいと思います。

なぜ、研修は受け身になってしまうのか?

「研修」といっても様々ですが、社員の必要性に応じてテーマを分けて行われるのが通常です。形式は、座学の場合もありますが、企業での教育ということもあり、実践を意識したグループワークや、ディスカッションによる主体的参加の研修が好まれる傾向にあります。

しかし、「研修」では新しいことを学ぶ要素があるため、インプットをする割合が多くなります。そのため、受講者はアウトプットをしているようでも、受け身的にならざるを得ない側面が往々にして生じてきます。ここに自律的な学びを阻む課題の発端があると捉えます。

研修で行うアウトプットとは何か?

企業研修では、対面式の集中型研修が多用されています。1〜2日間ほど、本社や研修センターに集い、社員同士が切磋琢磨しながら、スキル習得を目指します。オンライン化した研修も増えていますが、やはり対面式で実施するほうが効果的と判断されるのは、当然の流れとも感じます。

先ほどの話に戻ります。

アウトプット型の研修であっても、習得・達成目標があるため、最初に講師の話を理解することが必須です。そして、トライアル・演習の時間が与えられ、一定のルールの中でアウトプットをしていきます。これは、自動車免許の取得における、教習所内での運転、訓練と似ています。自動車を動かす行為(研修内での発言)に始まり、指導員の時間管理のもとで、決まったルートを走ります(研修のワーク)。つまり、研修では原則、講師のタイムマネジメントのもとで、アウトプット(発言)、ワーク等を行なっています。この点を主催者側(人事等)はあらためて認識しておく必要があります。

研修の特性をメタ認知することで、実際に使ってみる意識につなげる

教習所では指導のもとでうまく運転ができても、実際には一人で、道路事情を把握しながら円滑に運転を行わなければなりません。それには、「自らの意志で車を動かすんだ!事故なく目的地まで行くんだ!」といった、自律的なマインドが肝要です。

同様に、研修でアウトプットし、ワークをこなせたからといって、実際の現場でも同じようにうまく使えることにはなりません。職場のリソース等を考慮しながら、「研修でアウトプットしたこと、ワークで気付いたことを、実際に現場でも使ってみよう!職場を善くしよう!」といった自律性が重要となってきます。

従って、トライアル・演習でのアウトプットやワークを、いかに現場実践へ接続していけるかが鍵を握っています。いわゆるメタ認知的に、受講者が研修の特性を理解した上で、意識変革、マインドセットをする(実践の意志を持つ)ことが不可欠になってくるのです。
測定の前に、実践する動機を高めることが肝となってきます。

どのように行うか?

研修実施後の1ヶ月の転移状況が、1年後の状況を予測すると言う論説*があります。受講者が予めこの研修特性を認識するようになれば、「研修を受けるだけでよい」といった、正に受け身的なマインドを改善することに繋がります。
研修を活用しないなら、受けている時間が無駄になるといった意識が社員個々に芽生えれば、自律的な学びに繋がるかもしれません。
社員の行動変容を促して研修効果を高めたい場合、研修終了後の受講アンケートでその意識付けをすることがおすすめです。終了後1ヶ月間で、具体的に(1)どの研修項目を(2)いつ実践するか等々を聞くことです。
主催者側(人事等)による学びの活用・実践状況の把握を踏まえて、何らかのフィードバック(講師や人事から)ができれば理想的です。

* 中原淳 (2022) 研修評価の教科書 関根雅泰他(共著), ダイヤモンド社, pp.126-128; Axtell, Maitlis & Yearta (1997) Predicting Immediate and Longer-term Transfer. Personnel Review, pp.201-213

まとめ

今回のVol.1コラムでは、「研修」そのものが持つ特性を、概略的に捉えて対策を練ることの重要性ついてに触れました。
研修効果測定の具体論に入る前に、上述の機微を考察した理由があります。ともすれば、効果を測定すること自体が、目的として議論される懸念があるためです。「研修」の評価をするためだけに効果を測定するのでしょうか。
何のために研修効果を測定するのかを、明確に捉える必要がありそうです。投資対効果(ROI)だけを考えて研修を実施する企業は少ないからです

via-learn編集部


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